Aqua 1 (BLADE COMICS)

Aqua 1 (BLADE COMICS)

ARIA (1) (BLADE COMICS)

ARIA (1) (BLADE COMICS)

今年はBLACK LAGOONや絶対安全剃刀、ネギま!沈夫人の料理人吼えろペンと色々良作があったのだれど、これが今年の最高峰だった。天野こずえは小学校だか中学校の時に大好きで、当時は短編集まで買ってたからひいき目になっているのかもしれないが。

ARIAは、未来のテラフォーミングされた火星にあるネオ・ヴェネツィアという都市で、一人前の水先案内人(ウンディーネ)になるため日々頑張る主人公のお話で、天野こずえは昔っからSFを描いてたけれど、未だにSFにこだわっているというのはびっくりした。はっきり言って売上につながりそうな要素が一つもない。
しかし、この漫画は最高に面白いわけで、この面白いというのがおそらく今年出版された漫画の中では圧倒的に異質な面白さで成り立っている。この異質さは、まず設定やあらすじを一通り聞いても全く面白そうでないところもそうであるし、また、現代の漫画において登場人物が誰一人病んでいない、トラウマを持っていないというところにあって、おそらく作者はあえてそのような縛りで描いているとしか思えないのだけれど、エロは描かない、トラウマは描かない、バトルは描かない、売れそうな要素は入れないという縛りで連載できる人間が一体どのくらいいるのだろうか。
宣伝文句なんかではこの異質さをして「ヒーリングコミック」だの「癒し」だのと、とてつもなく矮小化しているが、実はこの異質さはそんな言葉で表すことができるものではなく、むしろ漫画を描く上で誰もが反応するパターンを破壊している上、そのようなパターンを破壊している漫画が広く読まれているという2点から漫画という表現の可能性を示した稀有な異質さだと思う。

こういう方向で語りだすとどこまでも空回っていくので、もう少しARIA自体について考えてみると、ARIAには文化祭前日のような、一種理想の人間関係と時間の流れというものがあって、この理想を決して繰り返しではない日常として描いているから、つまんない日や面白い日を過ごしている読み手は実際に自分が接している日常に対して希望と可能性を感じることができるようなところがあると思う。
あと、作者は狙ってるのかどうかは分からないけど、作中異世界に迷いこんでしまう描写が度々あるけど、ああいう中心部に近ければ近いほどウツロ(空ろ/虚ろ)になるという概念は確か神道かなんかで、少なくともとてつもなく和風な概念なのでネオ・ヴェネツィアでああいう現象が頻発してるというのは妙な面白さがある。四季もすごいわかりやすいしね。

AQUA連載→出版社倒産→ARIAとして再開というようになっているので本が分かれているけれど、内容は完全に繋がっているので、読むならAQUAからにするのがお勧め。

漫画読みなら必読書ということで。