お留守バンシー

お留守バンシー (電撃文庫)

お留守バンシー (電撃文庫)

ふとライトノベルが読みたくなって、知り合いにいくつか見繕ってもらったは良かったけど、近所の本屋には涼宮ハルヒの憂鬱灼眼のシャナが平積みになっているばっかりで、目当てのものが置いてなかった。それで、適当に見覚えがある本を直感で表紙買いした。
あらすじ等はこちら。 http://www.mediaworks.co.jp/3taisyo/12/12novel1.html

この作品が凄いところは、全5章構成でキッチリと起承転結となってる中でも、承にあたる第2章の「嵐のまえのなんやかや」だと思う。本当に、なんやかやとやってるだけなんだけど、全然ページをめくるのが苦にならず、むしろさらっと読ませる。個人的には起承転結なんかつけずにずっと、なんやかややってるのを300ページくらいにわたって書いてほしいくらいだ。そのくらいのライトノベルを出版しても意外と売れそうな気がするけど。あと、主人公のアリアが所帯じみてて、妙に腹黒な感じもとても良い。
全体的にとてもほのぼのして面白いんだけど、一点気になったところがあって、

ガス灯が夜の街角を丸く照らしだし、辻馬車が石畳の上で馬の蹄鉄を軽快に響かせていた十九世紀中頃。
独善的な科学がカビ臭い迷信を駆逐しつつあったこの時代では、かつて神の信奉者と対等に渡り合っていた闇の眷属も、わずかに残された自分たちの聖域を堅持して、ひっそりと暮らすことを余儀なくされていた。

冒頭が上記のようになっていて、十九世紀の中頃って産業革命は終わっている上に、蒸気機関がバリバリ動いていて、日本ですら下手したら新撰組が結成されてるかもしれないくらいで、科学が迷信を駆逐しつつあったどころか、もうすっかり駆逐し終わった頃のように思うんだけど、著者は何か目的があって17世紀とか18世紀とかではなく、19世紀にしたんだろうか。19世紀を舞台にしたファンタジーはちょっと見たこと無いので、もしも作者が意図的に19世紀を選んでいて、さらに鉄とか火薬みたいな近代を絡めた物語を作ることができれば、ファンタジーとしては新しい領域を切り拓けるかも。つか個人的には21世紀にペガサスが居ても良いと思うけどね。