形而上学入門 (平凡社ライブラリー)

形而上学入門 (平凡社ライブラリー)

まだ2章までしか読んでないのだけれど、とても面白い。

われわれが世界の暗黒化について語るとき、一体世界とは何であるか?世界とはいつも精神世界である。動物は世界を持たず、また環境世界をも持たない。世界の暗黒化とは精神の無力化を含み、精神の解消、消耗、駆逐、誤解を含んでいる。

ハイデガーがこんなにいい事言ってる人だとは知らなかった。一体世界とは何であるか?世界とはいつも精神世界であるとかって言い切ってるあたりがステキ。

この本を読んでいてちょっとビックリしたのは、あらかじめ筋を決めておいて書いているようなところが全くなくて、むしろものすごく漠然としたことを考えながら書いて、書いたことからまた考えるというような、どちらかというと小説のような書き方をされているところだった。なので、話はあっちへ飛びこっちへ飛びとしてるので結構再読、再々読をしないとついていけないし、その話が飛んだ先でも結論が書かれていなかったりするのだけれど、おそらくハイデガー自身の思考がかなりそのまま出ているためにそうならざるを得なかったのではないかと思っていて、その整理されてなさがくだらない雑談をしている時のような、妙なダイナミズムを生み出していて面白い。
こういうダイナミズムは、論理的に文章を書いてしまうと決して生まれないようなもので、この本自身も、細部はとても論理的に書かれているけれど、そもそも扱っているテーマ自体があまりにも不可解なものなので、全体の論理的な構成としては破綻していると言ってしまってもいいと思うのだが、その破綻しているということによって、いろいろな別の事柄にも触れ合えているというのは、ちょっと見たことがなかった。