エレニの旅

日曜に会社の人(id:yukiaji)とエレニの旅を観に行った。会社の人が10年に1度の傑作だと言っていたので、どんなもんなのだろうかと思っていたのだけれど、観終わった後、しばらくくらくらしてしまった。

エレニの旅は基本的にストーリーの起承転結で楽しませようといったようなものではなくて、美しい土地(これ重要)に住んでいる人たちが、自分ではどうにもならない政治的なもの(工業的、機械的なもの)に振り回されながらも一生懸命生きていくという喜びや悲しみ、孤独をひたすら描写し続けていた。が、その描写の仕方が普通ではなく、(会社の人に聞くと、この映画の監督アンゲロプロスはエレニの旅のような映画ばっかり撮っているらしい)飛躍はしてるし破綻もしててツッコミどころが満載で、受身で観てるとあっという間に置いていかれる違う意味でのジェットコースタームービーだ。
それについていくために、前のめりなって観てたんだけれども、この映画は家族愛や友情、美、音楽といった善性をそこかしこに散りばめているにもかかわらず、根底では帰るべき所のない者の孤独、別れ、戦争といったものがどよーんと流れている悲劇で、しかもその悲劇的な結果が起こるトリガーがそういった善性による行動だったので、前のめりになってた分ダメージが大きかった。人生悲劇ですか。はぁ。

しかし、ネットから得た情報によるとエレニの旅はどうやら3部作のうちの第1部のようで、だからこのような悲劇的な映画を撮ったのかもと思った。確かにエレニの旅はこれまでの過去に対するメッセージという受け取り方もできるし、なにより今どうしているのか、これからどうしたいのかといったメッセージが全く無かったように見受けられたので、2部と3部をどう撮るのか期待。劇中では機関車や車といった機械はひたすら暴力的に持ち去るという感じでかなりネガティブに描かれていて、かつお金が全く描写されていなかったように覚えているので、監督は相当現状の世界に不満をもってそうなのでそういう方向で2部,3部を撮ったりするのかも。

というわけで、この映画が凄いかどうかは、2部と3部合わせて考えたいので保留。
面白いかどうかは、どうもこの監督はまだ言語化されていない面白さをこの映画に詰め込みたかったようなので、観る人によって全く違う評価になると思う。

個人的には、何年かして、また観てみたい。